【明るくなることが利点】だが、実行する前に懸念点を知るべき。

ジャイロX・ジャイロキャノピーのヘッドライトを純正のハロゲンバルブからLEDバルブに交換すると、省エネで高輝度というメリットあります。その一方で、いくつかの問題が発生する可能性があります。安易な交換はトラブルの原因となるため、”注意点を理解”しておくことが重要です。
問題①「レギュレーターの故障」
ヘッドライトをハロゲンからLEDに交換すると大幅に消費電力が減ります。
発電した電気を熱に変えて捨てる役割を持つレギュレーターに通常よりも負担がかかり、故障する可能性があります。
レギュレーターが故障したら、交換する必要があります。
誤解を招かないように先に整理しますが、「すぐさま故障するとか、絶対故障するというわけではありません。」故障しやすくなるという注意点、有益な知識としてご説明しております。
ちなみに「問題①」と最初にあげたのには理由があります。
まず、筆者もLED化を行って様々な問題に遭遇しまして、その中でも大変だった問題がこのレギュレーターの故障でした。
「発電した電気を熱に変換して捨てる役割を持つレギュレーター」という装置ですが、場所としては、ジャイロキャノピーの場合は背中の後ろあたり、内部フレームに固定される形で搭載されています。
なぜ?LED化が原因で故障する理由
発電した電気は通常、主にヘッドライトで消費され、余った電気はレギュレーターと鉛バッテリーにて消費されます。しかし、ヘッドライトをLEDバルブに変更した場合、多くの電力が不要になります。
本来は発電自体を減らせばよいのですが、発電量はエンジンの回転数に依存している部分があり、どうしてもレギュレーターへの負担は増加します。(回転数が上がることで電圧も上昇する。)
レギュレーターへの負担が増加すると発熱量が増え、放熱が間に合わなくなり劣化していき、最終的には故障します。
レギュレーターは通常使用では定期交換などは不要ですが、LED化に伴い負担が増えると、古い個体の場合は即座に交換が必要になる場合があります。
ちなみに、レギュレーターが故障するとどうなるのかについては、典型的な症状はバッテリーの充電が止まり、バッテリーが上がります。また、電球類も切れやすくなります。
さらには、バッテリー上がりによる様々な問題へつながることなります。
これらによって、「バッテリー上がりが原因であると誤解してしまう」という問題につながり、対処法を見誤ることにも。(バイク屋さんなら見誤ることは無いと思われますが、修理に慣れていない素人なら陥りやすいので注意。)
「高まる故障リスク」を知る事、備える事が重要
不幸中の幸いなのか、単なる厄介か判断が難しいですが、ジャイロキャノピーはバッテリーが上がってもエンジンがかかりさえすれば運転可能です。
そうなるとバッテリー上がりが放置されたりして、充電困難な放電状態に陥る場合もあります。その場合はバッテリーも交換が必要になります。(それでもレギュレーター故障に気が付かずに、さらには2つ目のバッテリーを上げてしまいそれもダメになる場合すらあり得ます。)
従って「LED化をするとレギュレーターが故障しやすい」と知っておく必要があるわけです。
(もしくはこのような改造による故障であっても修理を引き受けてくれるバイク屋さんを把握しておく必要があるわけですね。)
※なお、本記事では深掘りしませんが、前述の通り【余った電気はレギュレーターと鉛バッテリーにて消費されます。】なので、もしもバッテリーをリチウムイオン電池に置き換えている場合、「リチウムイオン電池の過充電保護機能」によって、更に多くの電力が余ることに。
問題②「明滅が発生」

明滅(チラつき)が目立つ場合があります。ウィンカー以外の灯火類に関しては点滅は許されません。なのでヘッドライトの明滅・点滅は本来整備不良扱いになる状態です。
(ジャイロには車検がないのと整備不良として検挙するほどの悪質性がないので見逃されている事実)
チラつきの原因ですが、ジャイロX・ジャイロキャノピーのヘッドライトは交流発電機から直接電力を引いているので、交流電源を使用して光ります。
発電機はエンジン回転と同期しており、エンジン回転が低いと発電の波が低く遅くなってしまい、LEDのちらつきに繋がります。(ヘッドライトの電気はバッテリーから供給されていません。)
ジャイロに合うLEDヘッドライトバルブ製品の見分け方
LED球は「直流・交流両方」や「無極性」とされている商品もあります。しかし、その実態は様々です。
「交流対応」でも交流の片側電流のみをそのまま使用するものがあり、そういったLED球は特にちらつきが顕著に表れ、加えて電力消費量も少なくなる傾向で、レギュレーターへの負担も増加することが推測できます。
ジャイロと相性が良いLED製品の見分け方は難しいですが、LED球からケーブルが伸びており、途中に箱型の制御基板が備わっているモデルは比較的相性が良いと思われます。
というのも、そのような制御基板には、ダイオードとキャパシタを用いた整流(電圧の平滑化)装置を備えていることが基本でしょう。これにより発電量が不安定な原付バイクでもちらつきが軽減され、場合によってはレギュレーターにも優しいこともあり、相性が良いです。
問題③「光軸がズレて他車妨害または整備不良にも」

LEDの発光素子の配置によっては、純正のハロゲンバルブと異なる方向へ照らしてしまうことがあります。ほとんどのLED製品でこの問題に直面するでしょう。
簡単な解決方法はありません。

最低限の対処方法は、基本的にはロービームで光軸調整をすることです。ただし、ロービームでは光軸が合い、夜間の対向車へ妨害にならない光軸調節ができても、ハイビームが有効ではない角度になってしまうこともあります。
そうなると”ハイビームが故障した車両”になってしまい整備不良です。
ユニークな対処方法「フォグランプで代用」
明るいヘッドライトが欲しくてLEDへ切り替えたいなら「明るければよい」場合もありますね。
それならフォグランプを追加する方法があります。
汎用のフォグランプや作業灯を活用
Amazon等で「フォグランプ 12V」や「ワークライト 12V」などで検索すると様々な後付けLEDランプが販売されています。
ただし、非常に重要なことですが、フォグランプやワークライトをヘッドライト代わりに使用する場合は以下を考慮する必要があります。
- 照らす範囲が「狭角」なモデル
- ハイビーム・ロービームを切り替えられる製品
- 上方向への光を塞ぐカットラインが入った製品
- 大出力である必要は全くない。(10W~20W表記でも十分な可能性)
上記の何れか、または、すべてを意識して商品を選定する必要があります。
広い範囲を照らす広角なものは、下へ向けても光が漏れ、対向車や前方車への妨害(目くらまし)になる場合があり、ヘッドライト(ロービーム)としては使用しないでください。
また、フォグランプの消費電力は少ない方が良いでしょう。というのも、ヘッドライトの消費電力が変わらなければ、アイドリング時や市街地走行では電力があまり余らない可能性があるためです。特に大電力のフォグランプ製品を使用するとバッテリー上がりにつながります。
また、そもそも中華製LEDフォグランプ製品は表示のW数と実際の消費電力に乖離が見られることがあり、信用できません。
基本は表示よりも実際の消費電力は小さいのですが、その逆もあり得るので、W数は小さいものを選ぶと良いでしょう。(10~20Wの中華製フォグランプ製品でもジャイロキャノピー純正ヘッドライトよりは圧倒的に明るい印象です。)
また、2個セットで売られている製品が多いですが、1個のみを使用するのもお勧めです。1個と2個ではあまり見え方に差がない場合があることに加え、余計なバッテリー上がりを防止するためです。
フォグランプの電源はヘッドライト分岐もできるが、キーオン電源がおすすめ
ちなみにフォグランプの電源はヘッドライトから分岐して取得する方法もあるようですが、ヘッドライトの電源は交流であるため個人的にはおすすめできません。キーオンで通電する電源は間違いなくバッテリーから供給された直流電源であるため、そのような配線から分岐して取り出すのが良いでしょう。
※私の環境では実際に10~20Wの中華製フォグランプをキーオンの電源から引き出して配線していますが、バッテリーも上がらず快適に運用できております。
ハイビームとしてフォグランプを取り付けるのも良い
先ほど”問題③「光軸がズレ」”と解説した通り、実際に多くのLEDバルブでこのような光軸ズレは発生するでしょう。光軸をうまく調節できてもロービームとハイビームのどちらかしか合わせられない場合もあります。その際の対処法として、フォグランプをハイビーム用として追加することが有効です。
(常時点灯のハイビームはNGなので、消灯できるよう、配線の途中にスイッチを設ける必要があります。)
ジャイロキャノピーに簡単にフォグランプを付けるならコレ

当方製品のご紹介になりますが、「ジャイロキャノピー用フォグランプステー MDFS-GC(製品情報ページ・当サイト内)」を用いることで、ジャイロキャノピーに加工無しでランプ類を固定可能です。
フォグランプ以外にもデイライトやサイドマーカー、アンダーライト、ウィンカー等の取り付けにもご利用いただけます。
まとめ「レギュレーターが壊れてバッテリーや電球類も道連れになる可能性を頭の片隅に」
ヘッドライトのLED化によって電気が余る。それによってレギュレーターに過剰な熱負荷が発生し、故障を引き起こす直接的な原因となる。このことについて解説いたしました。
ジャイロキャノピーの暗いヘッドライトにお悩みの方が真っ先に思いつくのがLEDバルブへの交換。安くて簡単なのですぐに手を出してしまうかもしれません。ですが、厄介なことにレギュレーターという装置が故障するリスクも。
レギュレーターが故障するとヘッドライト・テールランプなどの電球類やバッテリーの故障にも繋がり、非常に厄介です。
出来れば先に知ってほしい情報ではありますが、既に交換されている場合でも、このような懸念を頭の片隅に置いておいてもらえれば、いざという時の円滑な解決に繋がると思います。
【免責】実際の仕組みと実体験を交えた解説でしたが、全てが正しい情報ではないかもしれません。また、改造は自己責任となりますので、あらかじめご認識の上参考になればと思います。